メンバーズ(2130)、営業利益25億円の予想が2億円に。株価641円、配当35円は据え置き

大企業のオフィスで働くデジタル人材のチーム

売っているのは、人の時間と腕だ。

メンバーズの仕事は、大企業のデジタル現場に専門人材のチームを送り込むこと。エンジニア、UIUXデザイナー、データ担当、PMO。そういうデジタルクリエイター(会社はDCと呼ぶ)を3名以上の専任チームにして顧客企業の中に入れ、Webサイトやアプリの運用、プロダクト開発、データ活用を一緒に回す。会社が名前を付けたモデルは「Digital Growth Team」、人の呼び方は「あたかも社員」。外から納品して終わる制作会社とは形が違う。

金の取り方は人月が軸になる。チームが稼働した分だけ売上が立つ。だからこの会社の数字を読むときは、DCの人数と稼働率と1人当たり単価の3つを見れば大筋が掴める。工場で言えば、機械の台数と稼働率と加工単価だ。設備は人で、在庫は持たない。

顧客は大企業が中心。2026年3月期は年間売上1億円以上の取引先が55社、3億円以上が14社あった。決算短信のリスク記載には、売上10%を超える取引先はないと書いてある。1社に首根っこを掴まれる形ではない。専門領域ごとに社内カンパニーを分け、UIUX、データ、PMOといった高めの仕事へ寄せていく途中でもある。2026年3月期のDX領域比率は54.2%、専門カンパニーの付加価値売上高は前期比54.7%増だった。

数字の並びは、売上が伸びて利益が暴れる型

売上収益は伸び続けている。2022年3月期149億円、2023年3月期177億円、2024年3月期205億円、2025年3月期223億円、2026年3月期244億円。止まった年はない。

利益は別物だ。営業利益は2023年3月期14.4億円、2024年3月期0.5億円、2025年3月期4.9億円、2026年3月期16.0億円。営業利益率は8%台からほぼゼロまで落ち、6.6%まで戻した。理由は稼働率で説明が付く。新卒を多く採った期は教育中の若手が増え、稼働率が沈み、利益が消えた。2026年3月期は全体稼働率83.1%まで戻し、売上総利益率が26.4%に上がって利益が跳ねた。

財務の形は軽い。2026年3月期末で自己資本比率52.0%、ROE19.5%。営業キャッシュフローは15.8億円、現金は44.4億円ある。工場も在庫も抱えない商売なので、固定費はほぼ人件費に寄る。裏返すと、稼働率が数ポイント動くだけで利益が大きく振れる。

配当は地味に長い。1株配当は2022年3月期25円から、30円、31円、32円、33円と増え、2027年3月期は35円の予定。2026年3月期の配当性向は34.8%で無理な水準ではない。会社はDOE(資本配当率)5%前後を目標に置き、後の資料ではDOE5%以上と配当性向25%以上を掲げた。

なぜ今、これだけ安いのか

2026年9月30日、会社が今期予想を大きく下げた。2027年3月期の営業利益は25億円の予想が2億円に、当期利益は17.4億円が1.5億円になった。売上収益の予想も269億円から250億円へ下げている。上期は営業赤字4.3億円の見通しに転んだ。

会社が挙げた理由は3つある。生成AIの進み方が想定より速く、要件がはっきりした運用・保守、コーディング、制作といった定型作業を担う人材の需要が想定以上に減ったこと。低単価案件から計画的に手を引いた分をDX側で埋め切れず、稼働率が落ちたこと。一部顧客が世界情勢を理由に投資を削ったこと。2027年3月期の第1四半期は売上57.5億円で前年同期比5.2%増えたのに、営業損失は4.0億円に広がった。全体稼働率は74.2%、前年同期から1.9ポイント低い。4月に入った新卒247名の人件費と研修費が先に出て、販管費率が25.3%まで上がったのも効いた。

株価はその流れで落ちた。52週高値は1,478円。2026年10月28日の終値は641円で、年初来では約5割安、直近1か月でも約3割安い水準というデータが出ている。InvestingProのフェアバリューは1,136.2円で、今の株価との差は77.25%。PER6.77倍、配当利回り5.11%、財務健全性は「とても良い」という画面表示だった。

市場が嫌っている中身は読める。今期の予想EPSは11.73円まで下がった。株価641円をこのEPSで割ればPERは50倍を超える。6.77倍という数字は前期の稼ぎを分母にした姿で、今期の姿ではない。配当35円も、今期の予想利益で割ると配当性向は単純計算で約300%になる。稼いで払うというより、貯めた資本から払う形だ。ここを市場は安く付けている。仮説として書くなら、割安という画面表示の裏側で、利益の谷がどれだけ深く、どれだけ長く続くかを市場が測りかねている、という状態に近い。

リスクは人に集まる

一番重いのはAIとの距離だ。会社自身が決算短信のリスク項目で、既存の主力だった大型Web運用がAIによる自動化の影響を既に大きく受けている、と書いている。定型の実行作業はAIに置き換わる。会社はAX(AIトランスフォーメーション)支援へ舵を切り、AI/データ関連売上は第1四半期に前年同期比83.6%増、売上比率15.0%まで来た。それでも全体の稼働の穴を埋めるには下半期以降が勝負で、会社も「成果が業績に表れるのは下半期以降」と認めている。

次が人だ。離職率は2026年3月期に12.1%まで上がり、会社は経営課題と書いた。賃上げは2026年4月にベースアップと定期昇給で8.1%。人件費は上がる方向に固定され、稼働率が戻らないと利益に直接響く。新卒を採って育てるモデルは、景気が傾いた年に販管費だけが先行する。第1四半期がまさにその形だった。

配当も同じ線の上にある。35円の維持はDOE基準で説明が付くし、現金44億円と資本の厚みはある。ただ今期の利益水準が続けば、増配の余地は細る。来期の配当がどうなるかは、稼働率と下半期の利益回復にぶら下がっている。

あとは小型株そのものの揺れだ。1日の売買代金は1億円強の水準で、9月30日の修正翌日にはストップ安まで売られた実績がある。悪いニュースが出た日に、思った価格で降りられるとは限らない。

自分にとっての魅力は、谷の深さより先に配当と財務で測れる形

自分が引かれるのは3点ある。配当利回り5%台は、株価が下がった結果とはいえ、給料から回す金の置き場として目に入る水準。自己資本比率52%と現金の厚みは、利益の谷が1年来ても会社自体がすぐ傾く形ではないこと。641円という株価は100株でも6万円台で、監視しながら小さく始められる大きさだということ。

引っかかるところもはっきりしている。今期の利益予想は一度大きく外れた会社の数字だ。下半期に稼働率75%を保ち、1人当たり単価が前年同期比8%増えれば予想に届く、という組み立てで、楽観の余地を会社自身が削った水準とはいえ、確認はこれからになる。

自分なら、いきなり大きくは持たない。次の四半期で稼働率と営業損益がどこまで戻るかを見る。配当35円が来期も同じ顔で出てくるかどうかも見る。その2つを確認しながら、持つとしても段階に分ける。フェアバリューとの差77%は、画面の数字としては大きい。ただ今の自分には、その差よりも、稼働率が74%からどこへ動くかの方が先に知りたい情報だ。

※免責:この記事はメンバーズ(2130)に関する情報提供を目的としたもので、投資の勧誘や売買の推奨ではありません。記事中のフェアバリューはInvestingProのモデルによる推計値であり、将来の株価や配当を保証するものではありません。業績予想を含む将来の見通しは、各社の開示時点の前提に基づくもので、実際の結果と異なる場合があります。数値は記載時点の出典資料に基づいています。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。