
売っているのは、エンジニアと案件の結び目だ。
TWOSTONE&Sonsの主力は「Midworks」というエンジニアマッチングだ。フリーランスのエンジニアを登録してもらい、企業の案件に紹介して稼働させる。企業から受け取る対価とエンジニアへの支払いの差額、言い換えれば仲介のマージンが収益の土台になる。人材紹介会社と似ているが、案件に入ったあとも稼働が続く限り売上が立つ。単発の紹介料で終わる商売ではない。
金の取り方を読む物差しは、登録エンジニア数と稼働エンジニア数の2つだ。登録だけ増えても、案件に入らなければ売上にならない。2026年8月期末の登録エンジニア数は71,258人で過去最高、前年同期比18.1%増だった。稼働エンジニア数も前年同期比6.3%増えた。ここまでは順調な顔をしている。
ほかに2つの柱がある。Webマーケティング支援と、戦略コンサルティング・M&Aアドバイザリーだ。2026年8月期のエンジニアプラットフォームは売上高176億1,800万円で前年比11.8%増、セグメント利益14億3,500万円で同25.0%増。コンサル側では、M&A仲介の子会社「M&A承継機構」が売上高21億1,600万円、営業利益5億4,800万円を計上した。主力が土台で、コンサルが利益の上積みになる構図だ。
数字の並びは、売上が伸びて利益が足踏みした型
売上高は止まっていない。2024年8月期142億9,000万円、2025年8月期180億7,700万円、2026年8月期218億500万円。会社は13期連続増収と説明している。売上総利益も76億2,100万円で前年比38.3%増と、売上より速く伸びた。
利益は別の顔だ。営業利益は2024年8月期4億7,400万円、2025年8月期8億1,900万円、2026年8月期8億1,000万円。2025年8月期に跳ねたあと、2026年8月期は前年並みで止まった。売上218億円に対する営業利益率は、単純計算で3.7%ほどしかない。売上総利益が伸びた分を、販管費の増加と、のれん償却費の増加が食った形だ。会社は、償却前利益にあたるEBITDAが13億500万円で前年比25.0%増、オフィス移転やM&A関連コストを除いた調整後営業利益も同30.2%増だったと説明している。会計上の営業利益だけ見ると、実力より弱く見える期だった。
財務の形は、重くはない。2026年8月期末で総資産107億円、純資産39億円、自己資本比率35.9%(前期33.7%)。営業キャッシュフローは10億円の収入で前期の7億円から増え、期末の現金及び現金同等物は46億円ある。親会社株主に帰属する当期純利益は4億2,900万円で、期末純資産に対する単純計算では約11%になる。
配当は、ほとんど飾りだ。2026年8月期の期末配当は1株当たり1円で前期の0.5円から増えたが、配当性向は10.3%だ。2027年8月期の年間配当予想も1円のまま。配当をもらうための株ではない。成長の対価を株価で取りに行くタイプだ。
なぜ今、これだけ安いのか
2026年10月6日、会社は2026年8月期の通期業績予想を下方修正した。営業利益は13億2,400万円の予想が8億1,000万円に、純利益は6億6,000万円が4億2,800万円になった。下方修正率は営業利益で38.8%だ。小さな手直しではない。期初の売上高予想24,182百万円に対して実績は21,805百万円で、23億7,700万円の未達にもなった。
会社が挙げた理由は、需要が消えた話ではない。企業からの案件数は底堅く、登録エンジニア数も期初想定68,000人を上回って71,258人まで増えた。詰まったのは、その間だ。企業への提案力、案件とエンジニアの組み合わせの精度、営業機能の専門分化と案件管理の精緻化。3つとも、需要と供給をつなぐ部分の遅れだ。結果として稼働エンジニア数は期初想定25,134人に対して22,684人にとどまった。登録者のうち稼働している割合を、開示の数字から単純計算すると、期初想定が約37%だったのに対して実績は約32%になる。人が集まらなかったのではなく、集まった人が案件につながらなかった期だ。
株価はその流れで落ちた。52週高値は903円、52週安値は273円。9月末から10月7日にかけて300円前後まで下がったあと、10月8日のLayer8との提携発表、10月15日の本決算と2027年8月期の大幅増益予想を受けて10月16日には499円でストップ高になった。そこから今朝のInvestingProの画面では375円に戻っている。
画面の割安表示は、こう読む。InvestingProの2026年10月29日朝のリストでは、現在株価375円、フェアバリュー663.37円、上昇余地76.90%、PER49.44倍、配当利回り0.22%、財務健全性は「良い」だった。ここでPERだけ取り出すと、話が変わる。2026年8月期の1株当たり純利益9.71円で375円を割ると、単純計算で約39倍になる。画面の49.44倍と細部は違うが、どちらにしても利益に対して安い水準ではない。フェアバリューとの差76.90%は、利益の割安さを示す数字ではなく、モデルがはじいた価値と今の株価の差だ。配当利回り0.22%も、配当1円の株としては当然の水準だ。割安の看板と、稼ぐ力の割安さは別物として分けておく。
リスクは、つなぐ部分と買収の後始末に集まる
一番重いのは、10月6日の修正で会社自身が認めたボトルネックが、来期も残るかどうかだ。2027年8月期の会社計画は、上期に営業・マッチング機能を強化し、下期から成長を再加速させる組み立てだ。売上高251億9,800万円で前年比15.6%増、営業利益15億3,100万円で同89.0%増、純利益7億7,400万円で同80.1%増。計画どおりなら過去最高益になる。ただ、2025年8月期も上方修正した予想に届かず、営業利益は予算10億1,800万円に対して8億1,900万円で着地した実績がある。予想を外す癖が、1回だけの話かどうかはまだ分からない。
次がM&Aの後始末だ。2026年8月期のM&A検討件数は299件で前年比33.4%増、第4四半期に1件の事業譲受を実行した。会社は「のれん償却後の利益が赤字となる企業は検討しない」という方針を掲げている。それでも、のれん償却費が増えた期に営業利益が伸び悩んだ事実は残る。
あとは子会社の上場に伴う取り分の変化だ。M&A承継機構は2027年中の新規上場を目指している。会社自身、上場後も議決権の過半数を保って連結子会社にすると説明する一方で、持分比率の低下により親会社株主に帰属する利益への取り込みは減少すると認めている。連結の売上・利益は残っても、親会社株主に届く利益は薄まる方向だ。
AIとの距離も、会社の説明をそのまま受け取るわけにはいかない。会社は決算説明資料で、AIを理由に人員を増やすという回答が日本では多いという調査を引いて、AIがエンジニア需要を生むと説明した。需要が増える話と、自分の会社がその需要を稼働につなげられる話は別だ。
自分にとっての魅力は、売上の伸びと現金の厚み、引っかかりは予想の外し癖
自分が引かれるのは3点ある。売上が13期連続で増え、第4四半期のMidworks売上高41億4,400万円が過去最高を更新したこと。営業キャッシュフロー10億円が営業利益8.1億円を上回り、現金46億円が手元にあること。375円という株価は100株でも4万円に届かず、監視しながら小さく始められる大きさだということ。
引っかかるところもはっきりしている。配当1円では、配当で下支えされる感覚はほとんどない。PERは単純計算でも約39倍で、利益が計画どおり伸びなければ高い買い物になる。そして何より、期初の稼働エンジニア数の想定を1割近く外した会社が、来期の営業利益89%増という計画をそのまま届けられるかどうかだ。
自分なら、いきなり大きくは持たない。次に確認する項目は1つに絞る。2027年8月期の第1四半期決算で、稼働エンジニア数が増えているか、Midworksの売上が伸びているかだ。会社が「上期は機能強化、下期から再加速」と言った以上、上期の数字がその言葉に沿っているかどうかが先に知りたい情報だ。その確認が取れるまでは、持つとしても段階に分ける。フェアバリューとの差76.90%は、画面の数字としては大きい。ただ今の自分には、その差よりも、登録71,258人のうち稼働につながった割合が32%からどこへ動くかの方が先に知りたい情報だ。
※免責:この記事はTWOSTONE&Sons(7352)に関する情報提供を目的としたもので、投資の勧誘や売買の推奨ではありません。記事中のフェアバリューはInvestingProのモデルによる推計値であり、将来の株価や配当を保証するものではありません。業績予想を含む将来の見通しは、2026年10月6日の業績予想修正と2026年10月15日の決算発表時点の前提に基づくもので、実際の結果と異なる場合があります。数値は記載時点の出典資料に基づいています。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。