
蔦屋書店のマネー本の棚で見つけて、そのまま買った。著者は「氷河期ブログ」のななしさん。私も参加しているブログ村の米国株ランキングで、いつも上のほうにいる人だ。タイトルは『手取り25万円、妻子持ちでも7000万円貯めた私の 氷河期世代のお金の戦略』(Gakken、2026年8月27日発売、税込1,760円、272ページ)。
村の顔ぶれと、1位のタイトルの落差
今日、ランキングを開いて並びを見直した。東大卒の専業投資家、総資産4.9億円のMBA、FIREを済ませた人たち。私のブログは49位にいた。並んでいる顔ぶれは、正直、世間離れしている。資産の桁も、働き方も、普通の会社員の生活からは遠い。
その村の1位にいる人の本のタイトルが「手取り25万円」だった。落差に引かれて買った、というのが正直なところだ。
著者のななしさんは1976年生まれ。就職氷河期の真ん中で社会に出て、リストラも、リーマンショックでの資産半減も経験している。非正規雇用で年収300万円台、専業主婦の妻と子どもを一馬力で養いながら、2026年に資産7,000万円に到達した。ブログは月間25万PV、Xのフォロワーは4万人だそうだ。ひろゆき氏が推薦の言葉を寄せている。
中身は最後まで地味だった
構成はこうだ。プロローグで目標は「65歳までに3,000万円」。第1章は、老後の生活費、年金の見込額、寿命から「本当に必要なお金」を4つのステップで見積もる。第2章は貯め方と使い方のシミュレーションで、3,000万円を年3%で運用しながら取り崩すと、65歳から110歳まで公的年金に月10万円を上乗せできるという試算が出てくる。2,000万円コースなら101歳まで月7.5万円だ。
第3章は運用の基本。賭ける先はS&P500とオルカンで、72の法則と生活防衛費の話。第4章はNISAの使い方。第5章は年金をいつからもらうか、付加年金、任意加入、そして老後のセーフティネットまで。投資を始めて15年目で3,000万円、20年目で7,000万円という著者自身の歩みが、全体の背骨になっている。
裏技は出てこない。節約して、余った分を低コストのインデックスファンドに長く入れる。それだけだ。
ネットの感想で共通していた3つ
読んだ人たちの書評をいくつか読んだ。共通していたのは3つだ。
1つ目は、投資の前に「いくら必要か」から入る構成が刺さった、という声。感覚で積立額を決めていた人ほど、年齢と利回りから積立額を逆算する表が効いたらしい。2つ目は、増やし方だけでなく取り崩し方、つまり出口まで書いてある点。投資本は増やすところで終わるものが多い。3つ目は、社会福祉協議会や生活保護までつながり方が書いてある驚き。投資本でそこまで書く本は珍しい、という感想が複数あった。
留保もあった。ブログの読者には内容が重なるという声と、感想サイトに紙の本の文字抜けを指摘する声が1件。総じて、「裏技なし」を欠点ではなく長所として評価する感想が大半だった。
私のやり方は、ほぼ真逆だ
正直に書くと、私の資産運用はこの本とほぼ真逆にある。個別株と高配当株で、配当という蛇口を太くする側だ。オルカン一本の話は正しくても、私の物欲は満たしてくれない。
もう1つ、正反対なのは入金への考え方だ。この本の設計は「収入が少なくても回る」ように作ってある。私は逆で、入金力こそ一番大事だと思っている。一所懸命働いて稼いで、入れる金を太くする。入金が太ければ、増え方の桁が変わる。年収を1,200万円まで持ってきたのも、突き詰めれば入金力を上げるためだった。働くことは投資の種銭を作る行為そのもので、私にとっては運用の一部だ。だからFIREもしない。いっぱい入れて、いっぱい増やしたい。その欲の置き場所が、この本とは正反対にある。
読んでいて退屈だったかというと、そうでもない。持ち帰ったものが2つある。
1つ目は、必要額から逆算する物差しだ。私の掲げる「資産3億円・手取り配当500万円」という目標は、老後に必要な額を積み上げて出した数字じゃない。区切りの良さと勢いで置いた数字だ。本の4ステップに自分の数字を入れたら、目標の置き場所が変わるかもしれない。
2つ目は、出口の設計だ。配当で受け取る私の形は「取り崩さない出口」だけど、年金の見込額と不足額を並べる作業自体は同じだ。増やす話ばかり書いてきた自分のブログの弱点でもある。
今週やる確認は1つ。ねんきん定期便の受給見込額と、老後の月の生活費を並べて、自分の不足額を出す。3億円という目標が本当に要るのかは、そこからしか分からない。
村の1位は、村の中でいちばん世間離れしていない人だった。その本が、蔦屋書店の棚に1,760円で平積みになっている。
書誌と試算の数字はGakken公式の紹介ページによる。感想の傾向は、公開されている読者の書評を複数読んでまとめた。
#米国株 #インデックス投資 #氷河期世代 #読書 #資産運用